教師あり学習 vs 教師なし学習:適用ケースと設計の考え方

AIや機械学習を学ぶ上で必ず出てくるキーワードが「教師あり学習」と「教師なし学習」です。これは学習方法の大きな分類であり、適切な手法を選ぶことはプロジェクトの成功に直結します。

この記事では、それぞれの学習方法の特徴や代表的なアルゴリズム、実際の適用ケース、そして選択・設計時の考慮点について、体系的に解説します。


■ 教師あり学習とは?

教師あり学習(Supervised Learning)は、「正解付きのデータ(ラベル付きデータ)」をもとに学習する手法です。

特徴:

  • 入力と正解(出力)のセットを学習
  • 精度を評価しやすく、パフォーマンスが明確
  • 大量のラベル付きデータが必要

主なアルゴリズム:

  • 線形回帰、ロジスティック回帰
  • 決定木、ランダムフォレスト、XGBoost
  • サポートベクターマシン(SVM)
  • ニューラルネットワーク(Deep Learning)

適用ケース:

  • 売上や需要の予測(回帰)
  • メールのスパム判定(分類)
  • 医療画像の診断支援(分類)
  • 音声や文字の認識(分類)

例:

顧客が商品を購入するかどうかを予測したい場合、過去の「属性+購入有無(ラベル)」を使って予測モデルを学習させます。


■ 教師なし学習とは?

教師なし学習(Unsupervised Learning)は、「正解のラベルがないデータ」に対して、構造やパターンを見つける学習方法です。

特徴:

  • データの背後にある法則性を探る
  • ラベルが不要でデータ準備が楽
  • 評価が難しい、チューニングが難解

主なアルゴリズム:

  • クラスタリング(K-means、DBSCAN、階層型クラスタリング)
  • 次元削減(PCA、t-SNE、UMAP)
  • 異常検知(Isolation Forest、AutoEncoder)

適用ケース:

  • 顧客のセグメンテーション
  • 異常行動の検出(不正取引など)
  • データの可視化や前処理
  • 自然言語処理での文書のトピック抽出

例:

Eコマースサイトの利用履歴から、似たような行動をするユーザーをグループ化してマーケティングに活かす、といったケースに有効です。


■ どちらを使う?設計の考え方

① データにラベルがあるか?

  • ある → 教師あり学習
  • ない → 教師なし学習

ラベルとは「この顧客は購入した/していない」「この画像は猫/犬」など、結果がわかっている情報のことです。ラベル付きのデータが多くあるなら、教師あり学習で予測モデルを構築する方が精度・評価の面で効率的です。

② 問題の種類を明確にする

  • 予測・分類したい → 教師あり学習
  • 構造を知りたい・グルーピングしたい → 教師なし学習

たとえば、「今後の売上を予測したい」というビジネス課題なら、数値を出力する教師ありの回帰モデルが適します。一方で、「顧客層をなんとなく理解したい」ならクラスタリングを試してみるのが自然です。

③ データ量と処理コスト

教師あり学習はラベル付け作業に人手がかかるため、コストと時間が大きくなることもあります。一方で、教師なし学習はラベル付けが不要なため探索的に始められますが、結果の解釈と活用が難しい場合もあります。


■ ハイブリッド手法もある:半教師あり学習・自己教師あり学習

最近では、少数のラベル付きデータと大量のラベルなしデータを組み合わせる「半教師あり学習(Semi-Supervised Learning)」や、「自己教師あり学習(Self-Supervised Learning)」という中間的なアプローチも注目されています。

例として、画像や言語モデルで事前学習を自己教師あり学習で行い、その後に少量の教師ありデータでファインチューニングする手法が主流になりつつあります。


■ まとめ:用途に応じた適切な学習手法の選択を

観点教師あり学習教師なし学習
ラベルの有無必要不要
主な目的予測・分類構造の把握・探索
代表的な用途需要予測、分類セグメンテーション、異常検知
評価のしやすさしやすい難しい
導入のしやすさラベル作業が必要手軽に探索可能

AIプロジェクトでは、「この課題は教師ありでアプローチすべきか?それとも教師なしで探索的に進めるか?」をプロジェクトの初期段階で判断することが重要です。

最も重要なのは、問題に合った手法を選ぶこと。手法を使いたいから問題を合わせるのではありません。

自分の課題に最適なアプローチを見極めて、機械学習の力を最大限に活かしていきましょう。


システム開発なんでもパートナー
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