位置情報サービスやアプリにおいて、「ユーザーの現在地が本当に正しいか」を確認するのは重要なセキュリティ対策のひとつです。近年では、VPNやGPS偽装アプリなどを用いて、意図的に位置情報を偽る行為が増えています。この記事では、IPアドレスと位置情報(GPSなど)との整合性をチェックすることで、こうした「位置偽装」を見破る基本的な方法をご紹介します。
なぜIPと位置情報を照合するのか?
IPアドレスはインターネット通信の「発信元の目印」であり、GeoIPデータベースを用いれば、そのIPが割り当てられている地域(国・都道府県・都市レベル)をある程度把握できます。一方、GPS情報はスマートフォンやPCのセンサーから取得できる正確な現在地です。
この2つの情報を照合することで、次のような不正の兆候を検知できます:
- IPが海外なのにGPSが国内
→ VPNで海外経由のIPを使いながら、GPSは偽装して国内の位置を返している可能性。 - GPSの位置とIPで特定される都市が明らかに離れている
→ スマホの位置偽装アプリを使っているか、位置情報を手動入力している可能性。 - IPの地域が接続のたびにバラバラ
→ VPNサーバーを切り替えていることが考えられます。
チェック方法の実装例
- IPアドレスから地域を取得
- MaxMindのGeoIP2や、ip-api.com、IPinfo.ioなどのAPIを使って、国や都市、緯度経度を取得。
- GPSまたはHTML5 Geolocation APIでユーザーの現在地を取得
- 2点間の距離を計算
- 緯度経度からユークリッド距離(またはハーヴァサイン距離)を算出し、一定のしきい値(例:50km)を超えた場合に「矛盾」と判断。
- 異常時にアラートや制限処理
- ユーザーに確認を求めたり、位置情報に依存する処理(ログイン、予約、購入など)をブロックする設計も可能。
注意点と限界
- IPベースの位置情報は必ずしも正確ではなく、特にモバイル回線では数百キロの誤差が出ることもあります。
- GPSはユーザーがブラウザの許可を与えない限り取得できません。
- プライバシー保護の観点から、位置情報の取得には事前に明確な説明と同意が必要です。
まとめ
IPアドレスとGPSの位置情報を照合することで、位置偽装の可能性を高い精度で検知できます。簡易的なチェックでも、セキュリティリスクの抑止力になりますので、位置情報を扱うサービスを開発・運用する際は、ぜひ導入を検討してみてください。