AWS Load Balancer(ALBやNLB)は、トラフィックの負荷を複数のサーバーに分散させることで、システムの安定性やパフォーマンスを向上させるために使われます。ただし、どんな場合でも導入すればよいわけではなく、適切な場面や判断基準を見極めることが重要です。以下に、AWS Load Balancerの導入が適切な場面とその判断基準を詳しく解説します。
導入すべき場面
1. トラフィックが多く、単一サーバーでは処理が難しい場合
トラフィックが急増した場合に、単一サーバーでは処理能力が限界に達してしまいます。このような場合、Load Balancerを使用して複数のサーバーにリクエストを分散させることで、負荷を軽減し、ダウンタイムを防止します。
具体例
- ECサイトのセール期間中のアクセス集中
- ライブ配信プラットフォームでの大量視聴者対応
2. 高可用性が求められる場合
ビジネスクリティカルなシステムでは、単一のサーバーに障害が発生した際にも、サービスを継続する必要があります。Load Balancerは障害が発生したサーバーを自動的に切り離し、正常なサーバーへトラフィックを流すことで、可用性を確保します。
具体例
- 金融取引システム
- 医療データのリアルタイム処理
3. スケーリングが必要な場合
スケールアップ(サーバーのスペックを向上)ではなく、スケールアウト(サーバーを増やして分散処理)を行う場合、Load Balancerは必須です。Auto Scalingと組み合わせることで、負荷に応じた動的なリソース管理が可能になります。
具体例
- 季節イベントに対応した予約システム
- トラフィックが時間帯で変動するAPIサービス
4. 複数のアプリケーションやサービスを統合して運用する場合
複数のアプリケーションが異なるポートやドメインで稼働している場合に、Load Balancerを使うことで単一のエンドポイントに集約できます。これにより、管理の複雑さを軽減できます。
具体例
- マイクロサービスアーキテクチャ
- APIゲートウェイのエンドポイント統合
5. SSL/TLSオフロードが必要な場合
Load Balancerを使うと、SSL/TLSの暗号化処理をオフロードでき、バックエンドサーバーの負荷を軽減できます。また、証明書の管理を簡素化するメリットもあります。
具体例
- HTTPSでのウェブアプリケーション運用
- セキュリティ要件の高いサービス
導入を判断する基準
1. 現在のサーバー負荷
CPU使用率やレスポンスタイムが高い場合、Load Balancerの導入を検討します。
2. スケーラビリティの必要性
今後のトラフィック増加が見込まれる場合、Auto Scalingとともに導入を計画します。
3. ダウンタイムの許容度
「システム停止が許されない」場合、Load Balancerを使った高可用性の実現が必須です。
4. セキュリティ要件
SSL/TLS暗号化やIPベースのフィルタリングが必要な場合に適しています。
5. コスト対効果
トラフィック量や利用目的に基づいて、Load Balancerの運用コストがサービス価値を上回る場合に導入を検討します。
まとめ
AWS Load Balancerは、多くのユースケースでシステムの安定性やパフォーマンス向上に役立ちます。ただし、導入にはコストが発生するため、トラフィック量やシステム要件、将来的なスケーリングの必要性などを総合的に判断することが重要です。適切な基準を基に導入を決定することで、効率的で高可用性のシステムを構築できます。