WebやアプリのUI/UXを設計する際、「なんとなくボタンの形やフォントがバラバラ…」「別のチームが作ったページだけ雰囲気が違う…」といった課題に直面したことはありませんか?
こうした**一貫性の欠如やデザインの非効率性を解消するために生まれたのが「デザインシステム(Design System)」**です。大手IT企業が続々と導入し、今ではプロダクト開発の基盤とも言える存在になっています。
この記事では、デザインシステムの概要から導入メリット、構成要素、そして成功事例までをわかりやすく紹介します。
デザインシステムとは?
デザインシステムとは、Webサイトやアプリのデザインに関わるルール・パターン・コンポーネントなどを一つにまとめたガイドラインやツール群のことです。単なるスタイルガイドではなく、「デザインと開発の共通言語」を目指したフレームワークです。
なぜ必要なのか?
■ 一貫性を保つため
UIの一部がプロダクトごとに違っていたり、更新のたびに微妙にデザインが変わると、ユーザー体験が損なわれます。デザインシステムはブランド全体で統一感のあるUXを提供することを目的とします。
■ 作業効率の向上
毎回ボタンやフォームを一から設計・実装する必要がなくなり、繰り返し使えるコンポーネントにより開発もデザインもスピードアップします。
■ チーム間の連携がスムーズに
デザイナーとエンジニアの共通のベースとなるため、仕様の食い違いややり直しを防ぎ、無駄のない開発サイクルを実現できます。
デザインシステムの主な構成要素
デザインシステムは多層的に構成されており、以下のような要素が含まれます:
層 | 内容 |
---|---|
スタイルガイド | 色、タイポグラフィ、スペーシング、アイコンなどのビジュアル要素 |
コンポーネント | ボタン、フォーム、モーダル、カードなどの再利用可能なUIパーツ |
パターンライブラリ | 典型的なUI構成(ログイン画面、エラーメッセージ、ナビゲーションなど) |
ブランドガイドライン | ロゴの使い方、トーン&マナー、ブランドのビジュアル指針 |
コードとUIの連携 | React/Vueなどのフロントエンドコンポーネントとの統合(Storybook等を利用) |
有名企業のデザインシステム事例
■ Google:Material Design
Googleが提供する統一デザインガイドライン。AndroidだけでなくWebにも広く使われ、豊富なUIコンポーネントと哲学が特徴。
■ IBM:Carbon Design System
スケーラビリティとアクセシビリティを重視した、エンタープライズ向けの洗練されたデザインシステム。
■ Salesforce:Lightning Design System
BtoB SaaSに特化した、機能性とカスタマイズ性を両立したコンポーネント群。
デザインシステム導入の注意点
- 最初から完璧を目指さない
小さなスタイルガイドからスタートし、プロジェクトに応じて徐々に拡張していくことが現実的です。 - ドキュメントを常に最新に保つ
コンポーネントの更新やルールの変更がチームに共有されていないと、形骸化してしまいます。 - ツールを活用する
Storybook、Figma、Zeroheight、Notionなど、ドキュメントとUIの一元化を助けるツールの導入がおすすめ。
デザインシステムは単なるデザインではない
実は、デザインシステムは開発と運用の戦略でもあります。
技術負債を防ぎ、ユーザーに対して常に高品質な体験を提供し続けるための基盤として、企業全体のUX向上を支えるのが真の目的です。
まとめ
- デザインシステムは「ルールと再利用性を持つデザインの設計図」
- 一貫性・効率・チーム連携の向上が最大のメリット
- スタイルガイド、コンポーネント、パターン、ブランドルールなど多層構造
- 小さく始めて大きく育てるのが成功の鍵
「まだ作っていないけど、今後必要になりそう…」という方は、まずは自社のUIで共通して使われているボタン・カラー・フォントから整理してみると良いスタートになります。