オブジェクト指向データベース(OODBMS)は、オブジェクト指向プログラミングの概念を取り入れたデータベース管理システムで、1980年代後半から1990年代初頭にかけて登場しました。この技術は、データベースの柔軟性と表現力を大幅に向上させ、複雑なデータ構造やオブジェクト間の関係を自然に管理するための革新的なアプローチを提供します。
従来のリレーショナルデータベース(RDBMS)がデータをテーブル形式で扱うのに対し、オブジェクト指向データベースは、プログラム内で使用されるオブジェクトと同じ形式でデータを保存します。これにより、データベースとプログラム間のマッピングが不要になり、プログラムコードとデータベースの整合性が高まり、複雑なデータモデルを扱う際に特に効果的です。
オブジェクト指向データベースの主要な特徴には、次のようなものがあります:
- オブジェクト同一性: オブジェクト指向データベースでは、オブジェクトが一意のIDを持ち、同一のオブジェクトが複数回使用されても同じIDで参照されます。これにより、オブジェクト間のリンクや関連付けが容易になります。
- クラスと継承: オブジェクト指向プログラミングと同様に、オブジェクト指向データベースではクラスを定義し、そのクラスからオブジェクトを生成します。継承を使用することで、クラス間の関係性や再利用性を高め、データの構造を柔軟に設計できます。
- メソッドの保持: データベース内のオブジェクトには、データとともに動作(メソッド)も保持されます。これにより、データの整合性を保ちながら、オブジェクトの操作をデータベース内で直接実行できます。
- 複雑なデータ型のサポート: OODBMSは、リレーショナルデータベースが扱いにくい複雑なデータ型(例えば、リスト、セット、ツリー構造)を直接管理することができます。これにより、特定のアプリケーションに合わせたデータ構造を自然に扱うことが可能です。
オブジェクト指向データベースは、CAD/CAM、地理情報システム(GIS)、マルチメディア、複雑な製品設計など、複雑なデータ構造を扱う分野で特に有効です。オブジェクトとデータベースがシームレスに統合されることで、開発の効率化とシステム全体のパフォーマンス向上が期待できます。